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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)912号 判決 1957年2月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人松本茂の上告理由第一点について。

所論は、原審が判決言渡期日を当事者双方に告知することなく判決を言い渡したのは違法であると主張する。しかし記録によると原審は、最初の判決言渡期日を職権をもつて延期し、追て指定した次の言渡期日の呼出状を当事者双方に送達したが、その期日に当事者双方出頭しなかつたところ、原審は、さらにその期日を延期し、次の期日を指定告知した。ところがこの新期日にも当事者は出頭しなかつたので、そのまま原審は、判決を言い渡したことが認められる。このように判決言渡の期日が、当事者双方に対し適法に告知された後、その期日になつてこれをさらに他の日時に変更する旨の言い渡しをしたときは、その言渡は、民訴二〇七条、一九〇条二項により、不出頭の当事者に対しても告知の効力を生じ、右の新期日につき当事者に呼出状を送達する必要がないと解するを相当とする。論旨は採用できない(なお所論引用の大審院判例は、口頭弁論を経ないでする控訴審の判決を、言渡期日の告知なくして言い渡したのを違法とするものであつて、本件とは事案を異にする)。

同第二点について。

所論は、原審が、借家人のためにその住居の安全を保証しなければ解約権を生じないという趣旨の判示をしたとして法令違反を主張する。しかし原判文を正読すれば、原審は、当事者双方の事情を詳かに比較判示した後、上告人の主張を排斥する諸理由の一つとして、「借家人のために住居について最少限度の安全が保証されていなければ所謂正当事由のあると做し難いことが多いと云うべきであること」を加えたにすぎず、決して所論の主張するような趣旨を判示したものではない。論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)

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